ここ数年、好況を謳歌していたマンション市況が悪化の一途をたどっている。大手ディベロッパーのマンションの在庫は2008年3月期末に軒並み増加、今期の粗利益率も低下する見通しだ。市況の大調整、大量供給時代の終焉という大波は、大手、専業、中小すべてを巻き込みつつある。
埼玉県川口市。ここ最近の“マンションバブル”の行く末を暗示するかのような物件がある。JR川口駅前に並んでそびえる2棟のタワーマンションだ。
両方とも藤和不動産が開発したもので、1棟は自社分譲マンション「ドリームタワー」として2005年末に発売、駅前の高層という人気物件だったこともあり、約4ヵ月で完売した。残る1棟は2006年末に竣工後、賃貸目的で不動産ファンド、シンプレクス・インベストメントに1棟丸ごと売却した。ところが取得後、市況の上昇に目をつけたシンプレクスは、急きょ、自らが売り主となり物件を分譲用途に転換し、2007年5月から「ソルクレスト」名で発売した。
問題は価格。平均坪単価は、隣の「ドリームタワー」と比べ約3割高く設定したのだ。物件価値が上がったといっても「正直、あの売価設定はないと思った」と大手ディベロッパー役員は首をひねったほどだ。
そこで昨夏、2割高程度に価格を引き下げたが、分譲開始当初に見込んでいた2008年2月頃の完売、という目標は大きくずれ込み、現在も約4分の1の戸数が売れ残っている模様だ。結局、今年末頃の完売を目標にしているが、ある不動産関係者は「発売から1年以上たっているので中古物件並みに見られている。もう一段値下げしないと完売は難しいのでは」と見る。
供給者側事情の価格高騰に
愛想を尽かす消費者
分譲マンションを取り巻く環境は、この半年あまりで激変した。大京では、グループ計で2008年3月期末には前期比約2倍の818戸に完成在庫がふくれ上がった。
他社からも「昨年の8月から契約率が急に下がってきた」(木下豊一・コスモスイニシア常務)、「昨年より大型案件が減った影響があるとはいえ、モデルルームの来場者数が昨年の半分程度になってしまった」(原一史・三菱地所住宅企画業務部副長)と切実な声が漏れる。変調は業界全体に広がる。